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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)132号 判決 1951年2月02日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松本正雄、野口恵三の上告趣意第一点について。

所論(一)被告人は第一審相被告人内記太郎の使用人であって両者の間に売買契約がなかったとの点(二)右契約の価格が「暴利トナルヘキ価格」でないという算定の点(三)本件甘藷生切干については物価統制令三条但書による例外価格の許可をえているという点に関する各主張は結局原審の裁量に属する証拠の取捨判断の非難である。しかし記録を精査しても原審がその裁量権を濫用して右取捨判断について採証法上の合理性を欠いたと認むべき点を発見することができない。されば所論中原判決に対する事実誤認の主張は上告適法の理由ではなく又原判決には理由不備の違法もないから論旨は採用できない。

同第二点について。

しかし原判決挙示の証拠によって原判示事実を充分に認めることができるから原判決には理由不備の違法はない。論旨は理由がない。

同第三点について。

記録を精査するに、原審第三回公判期日として指定された昭和二四年一〇月四日に被告人が病気のため診断書を添えて(右診断書には昭和二四年九月二七日より向う一〇日間の静養を要する旨が記載されいる)期日変更を申請し、このため次回公判期日が同年一一月一日と指定されたことが認められるけれども右の事実は第四回公判期日における被告人の不出頭についての正当の理由とはならない。又たとい弁護人中一人の死亡の事実を仮りに認めても弁護人全部の不出頭を正当化するものでもないと言わなければならない。されば強制弁護の事件でない本件において旧刑訴法四〇四条により原審が第四回公判期日において被告人、弁護人共に不出頭のまま川戸、上田両証人を喚問して審理を終結しても何等違法ということはできない。論旨は理由がない。

同第四点について。

原判決に対する量刑不当の主張は上告適法の理由ではない。

よって刑訴施行法二条、旧刑訴法四四六条により、裁判官全員一致の意見で、主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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